さよならハルメギド 感想
数千冊は漫画を読んできた私ですが、今回はそんな私に強烈な印象を残した作品「さよならハルメギド」を紹介します。
本作『さよならハルメギド』。
デフォルメされた可愛らしい絵柄ですが、描かれている世界観はかなり重いです。
舞台は昭和が終わり、平成が始まった夏。
世紀末の閉塞感とノストラダムスの終末論※が幅をきかせる、そんな時代。
※「1999年7の月に恐怖の大王が来る」=人類が滅亡の危機に瀕するという予言。
主人公の小学生将太は、母親と母子寮で暮らしています。
父親は一年前にとあるきっかけで離婚、今は離れて暮らしていますが、時折会う機会もあります。
将太は母親と父親とまた一緒に暮らしたいと思っていますが、母親に好意を寄せる男・有馬の存在と、父親との間で板挟みになっています。
母親、父親、有馬が"大人の世界"のキーパーソンです。
そして、同じ母子寮に住むかずよしくん、同級生の女子・白田さん。
この二人が、"子供の世界"のキーパーソンとなります。
二人とも家庭環境に問題を抱えており、それゆえ主人公に共感を覚えたのか次第に仲が深まっていきます。
未来への淡い期待と諦め、性の目覚め、共依存、子供世界の終焉などなど、たった3巻の中に様々なテーマが込められており、また衝撃的過ぎるラストに読み切ったときドッと疲労感を覚えます。
3巻最終話の解釈(ネタバレは無し!)
ラストの解釈は読み手によって様々だと思いますが、概ね二通りに分かれると思います。
ネタバレを避けつつ読んだ方には分かるように書きたいと思いますが、私は、最終話の少女は"嘘をついている"と思います。
即ち"もう一人の方"が正体だと思います。
根拠としてはいくつかありますが、彼女は登場時から嘘をついています。
また子供時代から直情的な行動に出る傾向が見られるケースがいくつかありました。
極めつけは離別の際の、一緒に世界の終わりを見ようという約束です。"世界の終わり"を見せる手段としてあの行動に出たと思えば辻褄が合います。
また、もう一人の彼女は主人公に想いを寄せているようでいて、実際は対等に見ていないと思います。
あくまで"可哀想"という感情、自分よりも下の存在を側に置いておきたいという思いが根底にあるように思えてなりません。それゆえに最終話の行動が彼女だとすると色々不可解です。
……と、最終話を読んでいないと何が何やら…だと思いますが、ぜひこの衝撃のラストを見た上で、改めて私の解釈を見ていただけたら嬉しいです。
「ハルメギド」とは、新約聖書・ヨハネの黙示録における神と悪魔との最終戦争の地、メギドの丘のことです。
即ち、かの有名な"ハルマゲドン"です。
作中で"世界の終わり"がどのように描かれるのか、ぜひとも『さよならハルメギド』を手に取り、その目でご確認ください。
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